桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「仁くん、今日は一日どうもありがとう」
 「うん、おかげで楽しかった」
 
 夕方、小さなレストランで食事をしたあと、帰りの車の中で二人は改めて仁にお礼を言う。

 「どういたしまして。楽しんでいただけて何より。俺も車を走らせたかったしさ」
 「日本じゃドン引きの、真っ赤な派手派手スポーツカーをね」
 「なにー?もう乗せてやんないぞ」
 「やだやだ、ごめーん」
 
 絵梨が手を合わせて謝る。
 仁は笑ってスピードを上げた。
 
 やがてフォレストガーデンに着くと、三人はダイニングルームで軽くコーヒーを飲むことにした。

 「はあ、明日帰国か。信じられない」
 
 ソファでクッションを抱えながら絵梨が言うと、美桜も頷いた。

 「うん。あっという間だったね」
 「二人とも、またいつでも来たらいいよ」
 「そうね…って、それ仁のセリフじゃないでしょ」
 「ははは、アレンに代わって言ってんだよ」
 
 そう言うと仁は、額にしわを寄せながら声色を変えた。
 「二人ともまた来るがいいさ。いつでも歓迎するよ」
 
 絵梨と美桜は顔を見合わせてから吹き出した。

 「は?何それ。まさかアレンの真似?」
 「やだ、仁くん。全然似てないし」
 「しかも何その口調。来るがいいさって」
 「ほんと。アレンそんなこと言わないって」
 
 お腹を抱えてしばらく笑い続けた。
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