桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「ふう、やれやれ。あーあ、荷物まとめないとな」
 
 ようやく落ち着いて絵梨が言う。

 「うわー、忘れてた。アレンが手配してくれたお土産、たくさんあるんだったね」
 
 ショッピングモールで、アレンが店員に頼んでくれたショートブレッドと紅茶は、部屋に予想以上の数が届けられていた。

 恐縮したけれど、アレンの優しさをありがたく受け取らせてもらうことにした。

 「パッキングは明日でいいや。ここを出るのは夕方だしね。それより私、せっかくだから最後にネイルしてもらってくる」
 
 そう言って立ち上がった絵梨が、美桜は?と振り返る。

 「うーん、私はいいや。日本に着いたらすぐ落とさないといけないし」
 「あー、次の日から仕事なんだっけ?」
 「え、美桜ちゃん、ハードだな」

 仁も驚いたような顔を向ける。

 「まあね。でも大丈夫。絵梨ちゃん、行ってらっしゃい。リサによろしくね」
 
 絵梨を見送ってからソファにもう一度もたれると、美桜は急に眠くなってきた。

 「はい、美桜ちゃん。コーヒーのおかわり」
 そう言って仁がカップを置いてくれるのを、なんだかぼんやりとしか感じられない。

 「ありがと…」
 かろうじて答えたあと、美桜の意識はすうっと遠くなった。
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