桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 コンコンとノックの音がして、メアリーはベッドメイキングの手を止めた。

 「はい」
 
 ドアを開けたメアリーは、思わず驚きの声を上げる。

 「アレン様!もうよろしいのですか?まあ!美桜様!」
 
 ノックしたのがアレンだというだけでも驚きなのに、アレンは美桜を抱きかかえて立っていたのだ。

 「どうされたのですか?美桜様」
 「大丈夫だ。疲れて眠ってしまっただけだ。ベッドへ」
 「は、はい!こちらです」
 
 メアリーは急いでベッドへ駆け寄ってスペースを整えた。

 アレンがゆっくりと美桜を横たえる。

 すぐさまメアリーは、美桜にブランケットを掛けた。

 が、アレンはじっとその場から動かず、美桜を見つめたままだ。

 「あの、アレン様?」
 
 何かを思いつめたようなアレンの様子に、メアリーが戸惑いながら声をかけると、アレンはふっと顔を上げてメアリーを見た。

 「ゆっくり寝かせてやってくれ。頼んだぞ、メアリー」
 「はい。承知いたしました」
 
 メアリーが頭を下げると、アレンは頷いて足早に立ち去った。

 (アレン様があんな表情をされるなんて)
 
 ドアを閉めながら、メアリーは考える。

 (何があったのかしら。あんなにお辛そうなアレン様は初めて)
 
 眠っている美桜を振り返ったものの、答えが出るはずもなかった。
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