桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「いや、違うんだよ、あの…」

 運んだのはアレンで、と続けたかったが、ん?と小首を傾げる美桜に見つめられて、慌てて下を向く。

 「いや、なんでもない」
 「そう?仁くん、何か様子が変じゃない?あ!もしかして私、そんなに重かった?」
 
 やだー、やっぱり太ったのかな、と美桜は見当違いな思い込みをする。

 「ここに来てから、おいしいものたくさん食べたもんねー、仕方ないよ」
 
 パンケーキを食べながら絵梨が言うと、ますます美桜は焦った顔をする。

 「やっぱりそうかな。あーどうしよう、衣裳が入らなくなってたら」
 「踊ってる最中に、ビリッ!とか?」
 「絵梨ちゃん、怖い事言わないで」
 
 両手で頬を押さえて真剣な表情の美桜を見ながら、仁はまたもや声をかけそびれた。

 (言わなきゃ。美桜ちゃんを部屋まで運んだのは俺じゃなくてアレンだって。でも…)
 
 それを言ったら、夕べアレンがここに来た事も言わなければいけない。
 そしてなぜすぐ帰って行ったのかも。
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