桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「美桜様のお支度を整えるのも、これが最後ですわね」
 「え、やだメアリー。そんなにしんみりしないで。涙が出て来ちゃう」
 「そうですわね。失礼しました。いつものように笑顔で、心を込めてお手伝いいたしますわ」
 
 そう言って鏡越しに微笑んでから、メアリーは慣れた手つきで美桜のヘアメイクに取りかかった。

 今日はどんなスタイルにするか、メアリーは美桜に尋ねることもなく進めていく。

 (きっと今日はおまかせコースなのね。楽しみ)
 
 やがて鏡の中の美桜は、髪をアップに、前髪も横に流して整えたフォーマルなスタイルに仕上げてもらった。

 (なんだか、かしこまった雰囲気ね。でも最後に皆さんにきちんとお礼を言いたいから、合ってるかも)

 鏡を覗き込みながら美桜がそう考えていると、後ろでメアリーがドレスを広げてくれた。

 「こちらをどうぞ」
 「わあ、綺麗な色ね」 
 
 薄い紫で裾が波打つように広がるドレスは、ウエストから左右に広がるように、薄いピンクがかったシルクオーガンジーが重ねてある。

 同じような胸元のデザインも、幾重にか重なった花びらのようだ。

 「とても良くお似合いですわ」
 
 そう言って微笑むメアリーに、美桜はありがとうとお礼を言うと、たまらずメアリーに抱き付いた。

 「まあ、美桜様。しんみりしてしまいますわ」
 「そうね。ごめん」

 お互い涙目になりながら笑う。

 「ありがとう、メアリー。行ってきます!」
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