桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「うん、おいしい!」
 
 美桜は、よく味のしみ込んだかぶを一口味見したあと、フレディに笑顔を向ける。

 「しっかりだしの味もするし、この配分がいいと思うわ」
 「ありがとうございます。美桜様に相談出来て良かったです。今までいつも、煮物の味付けが濃くなってしまって納得出来なくて」
 「きっと、だしが少なかったんだと思うわ。だから味付けの時に醤油が多くなってしまっていたのかも。基本、だしがおいしければ、あとの味付けは軽くてもいいと思うわよ」
 
 そう言うと、もう一口食べようと箸を口に運ぶ。

 と、ふと遠くから、美桜様ー?と自分を呼ぶクレアの声が聞こえてきて、美桜はがっくりうなだれながら箸を置いた。
 
 隣でフレディが苦笑する。

 「ここにいるのが見つかったらまた怒られるわね。じゃあね、フレディ」
 
 ドレスのスカートを持ちながら、急いで厨房を出て行こうとした美桜は、最後にもう一度フレディを振り返った。

 「その煮物、本当においしかったわ」
 
 はい、と頷く前に出て行った美桜に、フレディはもう一度苦笑いしてから、自分も味見してみる。

 (うん、おいしい。これだ)
 
 ようやく納得のいく味付けが出来て、フレディはほっと息をついた。
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