桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「まあ!」
 
 美桜は口元を押さえたまま、目を見張った。

 「美桜様のイメージで作ったティアラです」

 そう言ってクレアはそっと手に取り、美桜に見せてくれた。

 「このお花の装飾、何かお分かりですか?」

 美桜は涙を拭いながら、何度も頷く。

 「桜、ね」
 ようやく声に出すと、クレアはにっこり笑った。

 「ええ、そうです。ピンクダイヤモンドも所々あしらっています」
 
 キラキラと輝くティアラは、息を呑むほどの美しさで、美桜は何も言葉が出なかった。

 「さあ、美桜様。着けてみてくださいませ」
 「ええ?ううん。ダメよ、こんなすごいもの、私なんかが」
 
 必死に手で拒んでいると、美桜ちゃん、とジョージの声がした。

 「ウォーリング家の(あるじ)として、お願いするよ。美桜ちゃんのために作らせたんだ。ぜひ受け取って欲しい。我々は、これを美桜ちゃんに贈ることをとても幸せに思っているんだ。こんな機会を与えてもらった事にも感謝している。ありがとう」
 
 隣でアレンも微笑みながら頷く。

 美桜はもう、涙で何も言葉に出来なかった。

 「さあ、美桜様」
 
 そう言ってクレアがゆっくりと美桜の頭にティアラを載せる。

 「まあ、お美しい。本当によくお似合いですわ」
 
 一歩離れたクレアが溜息混じりに言い、そこにいる誰もが頷いて微笑んだ。

 「ありがとございます。本当に。私の方こそ皆さんに良くしていただいたのに、こんな…」
 
 声を詰まらせながらお礼を言う美桜を、クレアがそっと抱きしめた。
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