桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 いよいよお別れの時だった。

 パレスのエントランスに、ジョージをはじめ、クレア、グレッグ、メイソン、フレディが並ぶ。

 少し離れた所にも、護衛隊の隊員や若いメイド達が並んだ。
 
 車寄せには、珍しく濃紺のスポーツカーが停められていた。
 アレンがフォレストガーデンまで運転してくれるのだという。

 「じゃあ美桜、そろそろ行こうか」
 
 やがてアレンが切り出し、美桜は頷いて皆に向き直った。

 「皆さん、本当にありがとうございました」
 深々とお辞儀をする。

 「こちらこそ。美桜ちゃん、ここは美桜ちゃんの第二のふるさとだ。いつでも帰ってきて欲しい。皆で楽しみに待っているよ」
 
 ジョージが優しく言い、美桜はまた涙が出そうになるのを堪える。

 「はい。ありがとうございます」
 
 続けて美桜は、クレア達一人一人に目を向けていく。

 グレッグとフレディの優しい眼差し、いつも強面だけどどこか憎めないメイソン、若さとやる気に満ちた護衛隊員達、皆の顔を決して忘れないようにと心に刻む。

 最後に美桜は、ハンカチで顔を覆ってひたすら涙を拭うクレアの前に立ち、苦笑する。
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