桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「美桜、最後にちょっと付き合ってもらってもいいかな?」
 
 敷地を抜け、門のところまで来ると、アレンはウインカーを右に出しながら美桜に尋ねた。

 「え、うん。もちろん」
 
 美桜が答えると、アレンはフォレストガーデンとは反対方向の右へと車を走らせる。

 「どこかに行くの?」
 「ん、まあね」
 
 そう言ってハンドルを握るアレンは、なんだかいつもと違って新鮮に映る。
 
 しばらく黙って車を走らせたあと、着いたよ、とアレンはエンジンを切った。

 (着いたよって、ここ?どこだろ)
 
 美桜は窓の外を見て戸惑う。

 山道のようなところをずいぶん登って行くなと思っていた矢先に、着いたよと言われても。

 そう思いながら、ドアを開けてくれたアレンにお礼を言って降りる。

 辺りはまさに山の中腹といった感じだ。

 「アレン、ここって?」
 「こっちだ」
 
 美桜の質問には答えず、アレンは木々の間を歩いて行く。
 美桜はそれに従うしかなかった。
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