桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「美桜ならきっと、自分と同じように感じてくれて、気持ちを共有出来るんじゃないかと思って」
 
 そう言うとアレンは、美桜に優しく笑いかけた。

 「連れてきて良かった」
 
 夕焼けにふんわり照らされて微笑むアレンはとても綺麗で、美桜はドキリとしながら思わずうつむいた。

 「美桜、改めて俺からもお礼を言うよ。あんなに楽しそうで明るいパレスのみんなを見るのは、何年ぶりか分からない。親父も、クレア達も、みんな幸せそうだった。本当にありがとう」
 「ううん。私の方こそ、突然押しかけたのにとても優しくしてもらって。こんなにもこの数日間が大切なものになるなんて、思ってもみなかった。幸せな気持ちにしてもらったのは私の方よ。ありがとう」
 
 そう言ってから美桜は、ポケットに手を入れる。

 (どうしよう、本当に渡す?大丈夫かな)
 
 迷いながら、そっと忍ばせていたものを取り出す。

 「…アレン、あのね」
 「ん?なに?」
 「あの、これ。お礼、と言ってもお礼にはならないかもしれないんだけど。今回とてもお世話になったから、せめて何かお返しをしたくて…」
 
 煮え切らないようにそう言い、おずおずと四角い箱を差し出す。

 「え、俺に?開けてもいい?」
 
 下を向いたままこくりと美桜が頷くと、アレンはするっとリボンをほどいて箱を開け、中からケースを取り出した。

 ふたを開く音がして、美桜はますます身を固くする。
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