桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「うーん、結構時間ギリギリだな」
 
 空港のカウンターで手続きを済ませた後、腕時計に目をやりながら仁が言う。

 「ちょっとお茶でもしようかと思ってたけど、諦めてこのままゲートに向かった方が、ぐえっ!」

 話の途中でいきなり変な声を上げる仁に、何事かと目を向けると、絵梨が後ろから羽交い絞めするように、仁の首に手を回している。

 「ごめーん、美桜。私どうしても免税店見たいんだ。先に行ってるね」
 「え、あ、うん。分かった」
 「アレン!色々とありがとう。元気でね」
 「ああ、絵梨も」
 
 そうして絵梨は、後ろ向きの仁を引きずりながら、じゃあねーと手を振って去って行く。

 「アレンー、達者でなー」
 諦めたように引きずられながら、仁もアレンに手を振る。
 
 やがて二人の姿が見えなくなると、アレンは手を下ろして苦笑した。

 「なんだか最後までドタバタだな」
 「そうね」

 肩を並べて二人を見送っていたアレンと美桜は、しばらく間を置いてから向き合った。
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