桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 やがて美桜は、目を閉じたままおでこをアレンの胸につけた。

 包み込まれるような安心感が、ふわっと美桜の体を温める。

 (大丈夫。これできっとがんばれる。この先もずっと)
 
 そう自分に言い聞かせると、小さく頷いてから、美桜は両手でそっとアレンの胸を押して離れた。

 二人の間にすっと空気が流れ込む。

 「じゃあ、またね」
 
 そう言ってアレンに背を向けると、そのまま歩き出す。

 決して振り返ることなく、美桜は速足で歩き続けた。

 搭乗口までたどり着くと、飛行機に乗り込む人はまばらだった。
 どうやら絵梨達ももう乗っているらしい。

 明るく出迎えてくれるキャビンアテンダントになんとか笑顔で返し、座席番号を探しながら通路を歩いて行くと、心配そうに身を乗り出してこちらを見ている絵梨と仁に気付く。

 「おまたせ。絵梨ちゃん、お買い物出来た?」
 
 そう言いながら横に座り、シートベルトを締める。

 ん?と絵梨を見ると、絵梨は真顔でじっと美桜を見つめたあと、片腕を回して美桜の頭を抱え込んだ。

 (絵梨ちゃん?)
 
 絵梨は、自分の肩に美桜の顔をもたれさせると、ポンポンと労わるように頭を撫でてくる。

 ふっと気が緩んだ美桜は、知らず知らずのうちに目頭が熱くなってくるのを感じた。

 (少しだけ。いいよね)
 
 絵梨の肩を借りて、美桜は少しだけ泣いた。
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