桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 ドレッシングルームに移動すると、さすがにまだ誰もいなかった。

 電気とエアコンを付け、ポットにお水を入れる。

 お湯が沸くのを待つ間に奥の衣裳部屋へ行き、Tシャツとジャージに着替える。

 スタッフジャンバーを羽織って戻ると、お茶を淹れて自分のドレッサーに座り、業務日誌を読み始めた。

 特に大きなトラブルや急な欠勤者もなかったようでほっとする。

 アルバイトだった頃は、自分の勤務のことばかり考えていたが、契約社員になってからは自然と全体の事も気にするようになった。

 マグカップで手を温めながら、今日のシフトを頭に入れていく。

 すると「おはようございまーす」と元気に挨拶しながら、二年目の後輩、綾乃(あやの)が入ってきた。

 「おはよう、あやちゃん」
 「美桜先輩!おかえりなさーい。どうでした?お休みは」
 「うん、とっても楽しかった。あやちゃん、前半留守番組だったよね?ありがとう」
 「いえいえー、しっかりお留守を守っておりました」
 「あはは、ありがとう。お休みは明日から?」
 「はい!バリ島へ行ってきます」
 「へえー、いいね!楽しんできてね」
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