桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「だからホワイトデーも基本的には同じ感じ。特設ステージで、ダンサー六人ね。イメージとしては、バレンタインの方は、明るくポップな感じで衣裳も赤。女の子達がワイワイ言いながら、お目当ての彼にチョコを渡そうとするの。ちょっと演技も入れてね。ホワイトデーは、逆に男性が綺麗な女性に白いバラを贈るの。衣裳も白。でね、これまた初の試みで、クラシックバレエを取り入れたいの」
 
 ひょーと美桜は驚いてのけ反る。

 「バレエですか?うわー、すごい。でもとっても素敵なショーになりそうですね」
 
 驚いたものの、想像してみるとなんともロマンチックなショーになりそうで、美桜は両手を頬に当ててうっとりする。

 「でしょー?でもうちの男性陣にバレエがどれだけ出来るか、よね」

 由香がちょっと難しそうな顔をして言う。

 「ああ、まあ、そうですね。みんな基本的にバレエは習ってきてますけど、それをショーでやるのは…」

 いわゆるテーマパークダンサーは、意識してバレエを取り入れすぎないようにしている。

 バレエの腕の使い方や体の向きなどは、他のジャンルのダンスと比べると独特で、浮いてしまうのだ。

 リズムの裏拍を感じて踊るヒップホップのような振りも、バレエをずっと習っているメンバーは苦戦する。

 「そうなのよ。事情は私も分かるから、出来ないことを責めるつもりはないんだけどね。ただやっぱり今回のコンセプトはこれでいきたいの。ってことで、バレエの先生を呼んで特別に監修してもらうつもり」
 「おおー!それはすごい!」
 
 美桜は、由香の本気を見た気がした。

 「分かりました。ぜひこれでやりましょう!私も全面的に協力して…」
 
 そこまで言った時だった。ノックの音と同時に、みどりがミーティングルームに飛び込んでくる。
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