桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「会議中失礼します!ごめん、美桜。今からハピラキショー出られる?」
 「え、今からですか?」
 
 美桜は壁の時計を見る。

 ハピラキショーとは、ハッピー・ラッキー・スペシャルデイという名前の屋内ショーで、簡単なダンスをゲストにレクチャーして一緒に踊ってもらうという、通年行っている人気のショーだ。
 
 開演は一時半。
 今はちょうど一時になろうとしているところで、今日の出演メンバーはレッスンルームでウォーミングアップをしているはずだ。

 「三番ポジションのあゆみが、さっきアップ中に足をくじいたの。本人はいけるって言うんだけど、大事を取って休ませたくて。誰か他に、いきなり三ポジ踊れる子って言ったら、今日いるメンバーだと美桜くらいなのよ」
 「分かりました、すぐ行きます」
 
 美桜は立ちあがると、

 「他のメンバーは先にステージに向かわせてください」
 
 そうみどりに言い残し、急いでドレッシングルームへ向かう。
 
 カラフルな衣装に着替えると、えーっとハピラキのヘアメイクは…と思い出しながら、手早く整える。

 (準備運動は、ステージまでのダッシュね)
 
 軽く手首と足首を回して屈伸すると、バックヤードを全速力で走って舞台裏まで移動した。
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