桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 全員がVの字で観客に向かって前進していく。

 その間もフラッグの動きはめまぐるしく変わる。

 一番前まで来ると、踊っていた二人が頂点に加わり、曲の最後の音に合わせて皆でピタッと止まって敬礼をした。
 
 わあっと一斉に拍手が起こる。
 だが、まだショーは続く。

 今度は四人のドラム隊が、用意された楽器の前に歩み出る。

 スティックをカンカンと鳴らして合図を出すと、ドラムのリズムに合わせて再び列は動き出す。
 
 トリックターンや二人組の技、相手の顔の位置めがけてフラッグを横切らせ、危ない!と思った瞬間に相手が上半身をかがめて回避するなど、ひと時も目が離せない。

 一体どうなっているんだ?と混乱してしまいそうになるほど、列は色々な形に変わっていく。

 たたみかけるように、スピーディに次々と変化していた隊列は、やがて横一列に並んで止まった。

 ドラムロールが始まる。

 (いよいよラスト!)
 
 美桜が右手にギュッと力を込めた時だった。

 いきなり強い海風が、右側からザーッと吹きつけてきた。

 (え、どうしよう、このあと二回転で投げるのに)
< 167 / 238 >

この作品をシェア

pagetop