桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「んー…、なんだろ。今のところもう一回やってみて。センターの美桜の後ろに二人が回って、そうそこから。いくよ、ワンツースリーフォー、あ!美桜!」

 急に呼ばれて、美桜は驚いて由香を見る。

 「はい!なんでしょう」
 「ちょっとそのポーズ変じゃない?」
 「え、これですか?」
 
 お目当ての彼にチョコを渡したいけど、恥ずかしくて行けない、というシーンだった。

 「なんだろう、可愛さがまるでない」
 「え、そ、そんな」
 
 真顔でずばっと由香に言われ、美桜は怯んだ。

 「美桜先輩、こんな感じはどうですか?」

 綾乃がそう言って、口元に両手でグーを作り、上目づかいでパチパチ瞬きしてみせた。

 「おお、いいね。そんな感じ」
 
 由香が言い、美桜は綾乃を真似してみた。

 「こうかな?」
 「あっはは!それなんか違う。洗濯物を嗅いで、生乾きくさーい!みたいな」
 
 その場にいる皆がどっと笑い、美桜は反論する。

 「えー、なんですかそれ。主婦みたいな」
 「だってそんな感じなんだもん」
 
 由香はまだ笑い続けている。

 「じゃあ先輩、これは?」

 また綾乃の真似をして、両手を真っ直ぐ下に伸ばして組み、ちょっと体をひねってみる。

 「あはは、美桜、トイレ行きたいの?」
 「もう!そんなんじゃないですって」
< 176 / 238 >

この作品をシェア

pagetop