桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「わー、綺麗ね。ここからうちのパークの夜景が見えるなんて知らなかった」
 
 窓の外に広がる煌めくパークを見ながら、美桜はうっとりとする。

 「美桜ちゃんの職場のすぐ近くなのに?」
 「あはは、そうね。灯台下暗し、だね」
 
 あれから仁の車で近くのホテルへ移動し、最上階のレストランに入った。

 久しぶりに美桜に会えて嬉しいはずが、仁はどうにもさっき美桜と一緒にいた男性の事が気になっていた。

 美桜の隣の席に置かれた鞄の上には、彼が貸したであろうマフラーが載せられている。

 (さわやかな青年だったな。美桜ちゃんも楽しそうに笑ってたし。はあ、なんだよ。俺のライバルはアレンだけじゃないのか?)

 「どうかした?仁くん。溜息なんかついて」

 パンをオリーブオイルにつけながら美桜が聞く。

 なんでもないよ、と仁は首を振った。

 「そう?ならいいけど。あ、昨日大学に行ったら絵梨ちゃんに会ったよ。卒業式、三人で写真撮ろうねって言ってた」
 「ああ、うん。そうだね。そう言えば美桜ちゃん、アレンとは連絡取り合ってるの?」
 
 仁は、気になることをズバッと聞いてみた。

 「ううん、全然。お互いの連絡先も知らないしね」
 「そうなんだ…って、え?そうなの?」
 「うん。そうなの。だから全く。あ、メイソンとは時々やり取りしてるけど」
 「ええ?メイソンと?」
 
 しーっ、声が大きいよ、と美桜が人差し指を立て、ごめんと慌てて小声で謝る。

 (なんだって?あのカタブツのメイソンと?信じられない。あいついつの間に…)
 
 一体俺のライバルは何人いるんだ?と、仁は食事の手を止めてまた溜息をついた。
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