桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 三月一日。

 厳しいレッスンを乗り越え、ようやく迎えたホワイトデーのショー初日。

 美桜はいつになく緊張していた。

 (大丈夫。あんなに練習したんだもん。あとは思い切りやるだけ)
 
 舞台裏で待機しながら、大きく深呼吸する。

 「本番一分前!」
 
 みどりの声を聞いて、ダンサー六人が円陣を組む。

 「いよいよ初日。今までやってきたことを信じて!俺達みんなで恋人達を夢の世界に!」
 
 巧の掛け声に、皆でおお!と、観客に聞こえないように小声で叫ぶ。
 
 いざ、今年のホワイトデーのショー“恋人達のホワイトローズ”は幕を開けた。
 
 真っ白な衣裳で軽やかに踊る三人の女性。

 そこに男性達も現れて、楽し気に皆で踊る。

 ある男性は、愛する彼女と踊りたいが、勇気を出せずにいた。

 やがて夜になり、男性は彼女が一人、月明かりの中美しく踊る姿を見かける。

 息を呑むほどの美しい舞。

 思わず歩み出た男性は、手にしていた白いバラを捧げて愛を告白する。

 そっとバラを受け取り微笑む彼女。

 やがて二人は見つめ合いながら、踊り始めた。

 最後は、そんな二人を祝福するかの様に、皆で楽しく踊りフィナーレを迎える。
 
 キラキラと雪のように舞い落ちる紙吹雪の中、美桜は巧にリードされながら、微笑んでお辞儀をする。

 ふと一番後ろの客席を見ると、バレエの先生が感極まったように立ち上がって、大きな拍手を送ってくれていた。

 美桜は隣の巧を見上げて笑いかけた。
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