桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「お客様、どなたかお探しですか?」
 
 キャビンアテンダントが、優しくジョージに話しかける。

 「ああ、いや。大丈夫だ」
 
 首を伸ばして飛行機の通路をキョロキョロ見回していたジョージは、慌てて前を向いた。

 (それはそうだ。無理な話だ。イギリスだぞ?そんな急に言われて来られるはずがない)
 
 ジョージはふうっと息を吐き出し、新聞を手に取って読み始めた。

 その時だった。

 「お客様。お連れの方がいらっしゃいました」
 
 先程のキャビンアテンダントが、再び優しく声をかけてきた。

 (なんだって?)
 ジョージは顔を上げた。

 あれだけさっきまで探していたのに、いざ目の前に現れると、幻かと思って瞬きをする。

 「来ました。ただイギリスに行きたくて…」
 
 息を切らせて美桜がそう言うと、ジョージは涙を堪えながら、うんうんと頷いた。
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