桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
【九】再びイギリスへ
 メイソンが運転するリムジンは、やがて滑るようにパレスのエントランスに横付けされた。

 「じゃあね、美桜ちゃん。あとでね」
 
 意味ありげにウインクして、ジョージは一足先にパレスの中へと入り、出迎えたグレッグと一緒に階段を上がっていった。

 (本当に来たんだ、私)
 
 エントランスを見上げて感慨にふけっていると、美桜様!と声がしてクレアとメアリーが駆け寄ってきた。

 「おかえりなさいませ!美桜様」
 「ただいま!クレア、メアリー」
 
 三人でわあっと盛り上がりそうになり、慌てて、しーっと声のトーンを下げる。

 「アレン様に聞こえてしまいますわ。まずは広間へ」
 
 メアリーが促して、美桜達はそっと階段を上がる。

 ようやく三階の広間に入り、ドアを閉めると、もう一度お互い顔を見合わせて三人で抱き合った。

 「ああ、もう夢のようですわ。メイソンから、これから美桜様と一緒にパレスに戻ると連絡があって。びっくりしつつも、嬉しくて嬉しくて。ねえ、メアリー?」
 「ええ。美桜様にまたお会いできる日を、いつだろうとずっと楽しみにしていましたが、こんなに早く戻ってきていただけるなんて」
 「あら!私はもう、最初の五日で我慢出来なくなりましたのよ。美桜様にお会いしたくて、もう毎日その事ばかり」
 
 そう言って笑うクレアとメアリーの胸元には、それぞれあのブローチとネックレスが光っている。
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