桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 その頃書斎では、いつものようにジョージとアレン、グレッグの三人が机に向かっていた。

 スコットランドはどうでしたか?と聞くアレンの言葉にあいまいに答え、ジョージは帰ってくるなり仕事に取り掛かっていた。

 (そろそろ頃合いか)

 壁の時計を見てから、ジョージはグレッグに視線を送る。

 すぐさまそれに気付いたグレッグは、咳払いをしてから立ち上がった。

 「旦那様、坊ちゃま、今日のディナーは広間にご用意してもよろしいでしょうか?旦那様の旅のお話もゆっくりうかがいたいですし。いかがでしょう?」
 「あ、ああ。うん。いいんじゃないか」
 
 やや声が裏返るジョージを、少し不安に思いながらグレッグは続ける。

 「今宵はなにやらクレアが、ちょっとした音楽会を企画しているとか。演奏ができるスタッフに一曲披露させるそうです。お食事とともにお楽しみいただければ」
 「ほお、それは楽しみだ。なあ、アレン」
 
 ジョージの芝居がかった台詞にグレッグはヒヤヒヤしたが、アレンは書類に目を落としたままで、特に気にならなかったらしい。

 そうですね、と淡々と答えただけだった。

 「それでは早速準備を進めて参ります」
 「うむ、頼んだぞ」
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