桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 やがて広間では夕食の準備が整い、グレッグが書斎に二人を呼びに行くと、美桜達はいっそう緊張感に包まれた。

 「はあ、いよいよね。この位置で大丈夫?フレディ、そこから見えないわよね?」
 
 自分の姿がグランドピアノの陰で見えない事を、美桜はダイニングテーブルのアレンの席の近くにいるフレディに確認する。

 「はい。ピアノに座っているメアリーは見えますが、美桜様のお顔は全く」
 「良かった。じゃあここから動かないように、仁王立ちで吹くわ」
 
 美桜が肩幅に足を開いてどっしり構えると、メアリーは、ふふっと落ち着き払って笑う。

 「あ、いらっしゃいましたわ!」
 クレアが慌てて美桜達に声をかける。

 (落ち着いて、がんばろう!)
 美桜のささやきに、クレアとメアリーも頷いた。
 
 グレッグの先導で、ジョージとアレンが広間に入ってくる。

 美桜は、そっとアレンの様子を覗きたかったが、ぐっと堪えた。
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