桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 高校からの友人と、冬休みを利用してイギリス旅行を計画したのだった。

 正確に言うと、イギリスに住む友人に会いに来た。
 
 「今度の正月、アレンのとこへ遊びに行こうぜ」
 唐突にそう言い出したのは(じん)だ。

 「アレンのところって、え?イギリスってこと?」

 アイスラテのグラスをストローで混ぜながら、絵梨(えり)が驚いたように顔を上げた。

 美桜も同じく仁を見つめる。

 クリスマスももうすぐという十二月の日曜日、三人は行きつけのカフェに集まっていた。

 「そっ!二人とも長い間アレンに会ってないだろ?久しぶりに四人で集まろうぜ。アレンは忙しくてこっちに来られないみたいだから、俺らがあっちに行こう」

 まるでもう決まったことのように軽く言ってから、仁は絵梨と美桜の顔を交互に見る。

 「二人とも正月なんか予定ある?大学の講義始まるのいつ?」
 「いやいやいや、ちょっと待ってよ」

 慌てて遮る絵梨に美桜も頷いて続く。

 「お正月って、あと一か月もないよ。しかもイギリスなんてそんな。小学校の遠足でも、もうちょっと計画的だよ」

 真顔で訴える美桜に、仁は飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになる。

 「遠足って!美桜ちゃん、あはは」
 「ほんとほんと。お弁当とかおやつとか?」
 「せんせー、おやつはいくらまでですかー?」
 「三〇〇円までね。あ、バナナはおやつに入りませんよー」

 あろうことか、さっきは美桜と一緒に面食らっていた絵梨まで、仁と一緒にふざけて笑っている。

 「もう、二人とも!」

 そう言ってはみたものの、美桜もいつしか笑っていた。

 (なつかしいなあ、こういうやり取り。高校時代を思い出すわ)
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