桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 (…え?)
 
 拍手を受けて微笑み合う二人。
 メアリーと、そしてもう一人は…

 (…え?)
 
 人間、あまりに驚くと思考回路が止まるらしい。

 アレンは、全くと言っていいほど自分の頭が働いていないことを感じた。

 (どういうことだ?みんなは普通に笑って拍手しているし。…え?)

 「さあさあ、素晴らしい演奏を披露してくれた彼女に、ディナーの席を」
 
 ようやく拍手が落ち着くと、ジョージはグレッグとフレディにそう指示を出した。

 「では、どうぞこちらへ」
 
 クレアに促されて近くまで来ると、こんばんは、と声をかけてくる。

 「こ、こんばんは」
 アレンは、オウムのようにただ言葉を返す。

 「なんだなんだ、アレン。そのそっけない態度は。さぞや感動の再会だろうと思っていたのに。ねえ、美桜ちゃん」
 「み、美桜ちゃん?!」
 
 ジョージの言葉にアレンは急にのけ反り、ガタガタと音を立てて椅子の後ろに下がった。

 「ははは!お前、驚き過ぎて誰だか分からなかったのか?まあ、無理もないが」
 
 ジョージは笑いながら歩き出すと、
 「夜は長い。ゆっくり話をするといいさ」
 そう言い残し、じゃあね美桜ちゃん、といつものように片手を挙げて部屋をあとにした。
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