桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 ローズガーデンへの道のりも、終始アレンは黙ったままだった。
 美桜も仕方なく、アレンの後ろを黙って歩く。

 クレアが扉を開けてくれ、美桜は久しぶりにガーデンに足を踏み入れた。

 (わあ、やっぱりここの空気は綺麗)
 
 胸にみずみずしい花の香りを吸い込みながら、アレンに続いて歩いて行く。

 いつもとは違う夜のガーデンは、月明かりに照らされて、神秘的な雰囲気だ。
 所々にライトがあるだけで、まるで夜の散歩をしている気分になる。
 
 と、ふと小さな渡し橋の手前でアレンが振り返った。
 美桜に左手を差し伸べる。

 (え?あ、そうか、橋を渡るからか) 

 「ありがとう」

 そう言ってアレンの左手に自分の右手を載せると、急に美桜はドキドキし始めた。

 (やだ、アレンに触れるの久しぶりで。あ!アレン、あのプレゼント着けてくれてるんだ)
 
 アレンの左手首の腕時計を見ながら、美桜は嬉しくなって、うつむきながら頬を緩めた。
< 204 / 238 >

この作品をシェア

pagetop