桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 二人きりになると、アレンは美桜に部屋を案内して回った。

 「中央はカウンターキッチンになっていて、冷蔵庫もある。その奥はバスルーム。で、ここを上がると…」
 
 壁際にある螺旋階段を見上げ、美桜は胸を躍らせた。

 「上に上がれるの?」
 「ああ、ロフトになっている」
 
 そう言うアレンに続いて、美桜も階段を上がる。

 そこには広々としたベッドルームが広がっていた。

 「うわー、素敵!空を見上げて眠れるのね」
 
 アレンは、ベッドの端に美桜を座らせると、いい?ともったいぶって笑いかけてから、手にしたリモコンのボタンを押した。

 軽い音を立てながら、天井のスクリーンが壁のローラーに巻かれていく。

 と同時に、月明かりがサーッと部屋に射し込んできた。

 「わあ…、なんて素敵なの」
 
 あえて照明をつけていなかった部屋に、空から注がれる月の輝き。

 幻想的な雰囲気に包まれ、美桜はただ溜息をついた。

 「今日は満月なのね。とっても綺麗」
 
 そう言って空を見上げる美桜の横顔は、これまで見たことがないほど美しいとアレンは思った。
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