桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 その二日後、アレンと美桜は日本に発った。

 喜ぶのはまだ早い、大事なことがあるだろう、とジョージはあの後すぐに、難しい顔でアレンに言ったのだった。

 「美桜ちゃんのご両親に、ご挨拶に伺いなさい。もちろん、簡単には許していただけないだろう。大事なお嬢さんをイギリスになど。だがな、アレン。忘れるな。美桜ちゃんは、私の無理難題を見事に受け入れて、お前に会いに来てくれたのだぞ。その勇気と覚悟をお前も持たなければならん」
 
 アレンはしっかり頷いた。
 
 そうして二人で美桜の実家に挨拶に行くことになったのだが、やはりここは段取りが大事だろうと、美桜だけ一足先に行くことにした。
 
 羽田空港に着いてから、母に電話を入れる。

 「もしもし、お母さん?私。うん、元気よ。それでね、久しぶりに今日そっちに行ってもいい?ちょっと話したいことがあって」
 
 うん、うんと短いやり取りを繰り返してから、じゃああとでねと言って電話を切る。

 「大丈夫だった?」
 「うん、平気。夕飯作って待ってるねって」
 「そう、良かった。じゃあ家まで送っていくよ」
 「え、いいよ、そんな。アレンは都内のホテルに泊まるんでしょ?通り過ぎちゃうよ」
 
 美桜はそう言ったが、アレンは美桜の荷物も持ってズンズン歩いて行く。

 「久しぶりだなあ、日本。なんだか色々変わってるね」
 「あ、そうか。四年ぶりだもんね」
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