桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「早かったのね。今からお父さんとスーパーに買い出しに…。まあ!ひょっとして、アレン君?」
 
 美桜はぎくりとして顔をこわ張らせる。

 「はい。ご無沙汰しています」
 アレンは落ち着いた様子でお辞儀をする。
 
 美桜は、冷や汗が噴き出る思いだった。

 (どうしよう、ほんとだったら今夜私がアレンのことをそれとなく話して、明日挨拶に来てもらうはずだったのに)
 
 両親の反応を見てから、明日どう切り出すか、作戦を立てるつもりだった。

 それなのに…

 「まあ、こんなに立派になって。見違えたわ。あ、お父さん!ほら、アレン君よ。覚えてる?美桜の高校時代の」
 
 よりによって、父親までが玄関から現れ、美桜は内心ヒーッと悲鳴を上げる。

 「ん?ああ、覚えとるよ。イケメンだったからなあ。いやいや、これは。すっかり立派な大人の男性だなあ」
 
 アレンはもう一度、お久しぶりですと頭を下げる。

 「そう言えば、年明けに美桜達はアレン君に会いにイギリスに行ったんだろう?泊まらせていただいたとか。お世話になったね」
 「いえ、そんな」
 「こんな所で立ち話もあれだし、母さん、中に入っていただこう」
 「そうね、スーパーはやめて、お寿司でも取っちゃいましょうか」
 「おお、それがいい。さ、中へどうぞ」

 そう言って、どこのお寿司にしようかと二人はウキウキした様子で玄関に入っていく。
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