桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 美桜はアレンを見上げて、どうしようと言わんばかりに困った顔をする。

 アレンは、大丈夫と笑顔で頷いて、美桜を中へ促した。

 「さあさあ、どうぞ」
 
 アレンは、失礼しますと言って、勧められたソファに座る。

 「今、お茶を淹れるわね」
 「あ、お母さん、私も」
 「美桜はいいわよ。座ってお話してなさい。あら?あなた達、なんだか荷物が多いのね」
 
 美桜は再びぎくりとする。

 「あ、そ、そうかな。あのね」
 「実は、イギリスから日本に着いたばかりなんです。美桜さんを空港からこちらまで送り届けに来ました」
 「え、そうなの?美桜、あなたまたイギリスに行ってたの?」
 「あ、そ、そうなの、五日間ほど、また」
 
 アレンの落ち着いた様子に反して、美桜はしどろもどろになるばかりだ。

 「え、あなた達っていったい…」
 
 そこまで言って考え込んでから、美桜の母は、妙にしたり顔になった。

 「ははーん、なるほどね。そういうことか」
 「そういうこととは、ど、どういうことで?」
 「ずばり、あなた達、付き合ってるんでしょ?」
 「ええ?そうなのかい?」
 「そりゃそうよ、お父さん。でなけりゃ、二人で一緒にイギリスから帰ってきたりしないでしょ?」
 「え、でも一月の時は、アレン君帰ってこなかったんじゃないのかい?」
 「そこよ、そこ。あの時はまだ付き合ってなかったのよ。絵梨ちゃん達も一緒だったしね。でも本当は、イギリスで再会したのをきっかけに付き合うことにしたのよ。で、今回美桜がまた渡英して、今度は二人で帰ってきたって訳よ。ね?そうでしょ?」
 「い、いや、そうでしょうと言われると」
 「ほら、やっぱりそうなんだ」
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