桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「ほわー、あったまるー」

 ゆっくり体を沈ませていくと、体の芯からとろけていくような心地良さが広がった。

 「ふう。極楽極楽」

 さっきまであんなに混乱していたのに、もはやここが何なのか、どうでも良くなってきたのが笑える。

 美桜はなんだか楽しくなり、平泳ぎのようにスイスイとお湯をかき分けて進む。

 滝壺の辺りまで行くと、それ以上は近付けないように岩で囲われていた。

 淵に肘を付き、両手に顔を乗せてしばらく滝壺を眺めていた美桜は、もう少し向こうの方まで行ってみようとまたお湯をかき分け始めた。

 流れに上手く乗ると、時折ふわっと体が浮き、それが楽しくて美桜は子どものように、わーい!とはしゃいだ声を上げた。

 本当はもっと奥まで進んで全貌を明らかにしたかったけれど、はしゃいだおかげでのぼせてしまい、諦めて途中で上がることにした。
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