桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
高校から大学まで七年間通ったS学園。
ついにここを巣立つ時が来たと、美桜は感慨深く、車から校舎を見上げる。
「講堂だよね?式場。だったら西門が近いか」
「うん。よく覚えてるね、アレン」
「案外忘れないもんだよ」
ゆっくりと車を西門の手前で止めると、アレンは助手席に回ってドアを開け、美桜に手を差し伸べる。
「ありがとう」
「じゃあ、式が終わる頃に正門広場で待ってるから」
「うん。絵梨ちゃんや仁くんと一緒に行くね」
手を振って門の中に入っていく美桜を見送ると、アレンは近くのコインパーキングに車を停めた。
式が終わるまでの時間、キャンパスを歩いたり、カフェでコーヒーを飲んだりして懐かしむ。
(たった一年だったけど、ここに来て良かった。たくさんの思い出が出来たし、何より美桜達に出会えた)
なんだか今日は、自分にとっても卒業式のような気がする、とアレンは思わず笑みをもらす。
気が付くと、講堂からたくさんの袴姿やスーツ姿の学生が出て来た。
どうやら式が終わったようだ。
アレンもその人波に紛れて、正門広場へ向かう。
そこで仁や絵梨達と四人で写真を撮ることにしていた。
図書館の角を曲がり、正門に続く道に出た時だった。
アレンの目に、満開の桜が飛び込んできた。
(…なんて美しいんだろう)
そこに見事な桜の木があることは分かっていた。
けれどいざ目にすると、思わず圧倒されて立ち尽くす。
まるで夢の中のような幻想的な光景だった。
学生達が行き交う中、やがてアレンは、一人桜の木の下で佇む美桜を見つけた。
舞い落ちる桜吹雪に手を伸ばし、微笑んでいる。
アレンは、その美しさに見とれ、声をかけそびれていた。
すると、ふとこちらに顔を向けた美桜が、アレンを見つけて笑いかける。
アレンはゆっくりと美桜の前に歩み出た。
見つめ合う二人に、ひらひらと桜の花びらが舞い落ちる。
「綺麗だね」
「うん、綺麗ね」
そう言うと、美桜はふとある事を思い出した。
「ねえ、お父様もここで運命の出会いをしたのよね?」
「ああ、そうだった」
二人で桜を見上げてから、微笑み合う。
何年も前に、ここで同じように桜を見上げた若き日のアレンの両親を想い…
ついにここを巣立つ時が来たと、美桜は感慨深く、車から校舎を見上げる。
「講堂だよね?式場。だったら西門が近いか」
「うん。よく覚えてるね、アレン」
「案外忘れないもんだよ」
ゆっくりと車を西門の手前で止めると、アレンは助手席に回ってドアを開け、美桜に手を差し伸べる。
「ありがとう」
「じゃあ、式が終わる頃に正門広場で待ってるから」
「うん。絵梨ちゃんや仁くんと一緒に行くね」
手を振って門の中に入っていく美桜を見送ると、アレンは近くのコインパーキングに車を停めた。
式が終わるまでの時間、キャンパスを歩いたり、カフェでコーヒーを飲んだりして懐かしむ。
(たった一年だったけど、ここに来て良かった。たくさんの思い出が出来たし、何より美桜達に出会えた)
なんだか今日は、自分にとっても卒業式のような気がする、とアレンは思わず笑みをもらす。
気が付くと、講堂からたくさんの袴姿やスーツ姿の学生が出て来た。
どうやら式が終わったようだ。
アレンもその人波に紛れて、正門広場へ向かう。
そこで仁や絵梨達と四人で写真を撮ることにしていた。
図書館の角を曲がり、正門に続く道に出た時だった。
アレンの目に、満開の桜が飛び込んできた。
(…なんて美しいんだろう)
そこに見事な桜の木があることは分かっていた。
けれどいざ目にすると、思わず圧倒されて立ち尽くす。
まるで夢の中のような幻想的な光景だった。
学生達が行き交う中、やがてアレンは、一人桜の木の下で佇む美桜を見つけた。
舞い落ちる桜吹雪に手を伸ばし、微笑んでいる。
アレンは、その美しさに見とれ、声をかけそびれていた。
すると、ふとこちらに顔を向けた美桜が、アレンを見つけて笑いかける。
アレンはゆっくりと美桜の前に歩み出た。
見つめ合う二人に、ひらひらと桜の花びらが舞い落ちる。
「綺麗だね」
「うん、綺麗ね」
そう言うと、美桜はふとある事を思い出した。
「ねえ、お父様もここで運命の出会いをしたのよね?」
「ああ、そうだった」
二人で桜を見上げてから、微笑み合う。
何年も前に、ここで同じように桜を見上げた若き日のアレンの両親を想い…