桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 リサと一緒に受付まで戻ると、仁は別の女性となにやら楽しそうに話しているところだった。

 「Here comes your princess!(プリンセスのお出ましよ)」
 リサが声高にそう声をかける。

 (やだ、リサったら。なんてことを)

 恥ずかしさに美桜が思わず両手で頬を押さえていると、仁がふとこちらを見る。
 と、とたんにその顔からすっと笑顔が消えた。

 (え?仁くんどうかした?もしかして、ものすごく変なのかしら、私…)

 いつもの軽い口調で何か言われると思っていたのに、仁はじっとこちらを見たまま何も言わない。

 その沈黙に耐えられず、美桜はおそるおそる口を開いた。

 「あの、仁くん?どうかした?そんなに変?」
 「あ、いや、ごめん。そうじゃないよ。うん」

 仁は、はっとしたように慌てて首を振ると立ち上がった。
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