桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 二人が角を曲がるのを見送ってから、美桜は仁に言われた通りダイニングルームに向かった。

 (ここかな?)

 自分達の部屋の斜め向いに、ドアを開け放っている部屋があった。

 中を覗いてみると、確かに大きなダイニングテーブルがある。

 美桜はゆっくり中に足を踏み入れた。

 あちこちでキャンドルの灯りが揺れている。
 他に照明はなく、ぐっと明るさを落としている。

 (なんだかムード満点ね、ロマンチック)

 入ってすぐの右側に、言われた通りカウンターがあった。

 コーヒーや紅茶のポットの他にも、数種類のジュース、フルーツやクッキーなどもある。
 盛り付けも綺麗でおいしそうだ。

 (ビュッフェの軽食コーナーみたいね)

 美桜はカップにコーヒーを注ぎ、ミルクを多めに入れた。

 少し迷ってから、クッキーをトングで取って、カップのソーサーに載せる。

 さてどこに座ろうかとダイニングテーブルを見たが、あまりの大きさにためらった。

 (おっきいなあ。十人は軽く座れるわね)

 椅子は片側に三脚ずつ、六人分しかなかったが、ゆったりと距離を取っているため、詰めればもっと座れるだろう。

 ここに一人で座るのは何だか寂しい気がして、美桜は部屋の奥にあるソファに座ることにした。
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