桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「えー、ゴホン。それでは、我らの再会と永遠の友情を祝して」
 「かんぱーい!」
 
 仁が音頭を取り皆で乾杯する、それは昔からのお決まりだった。

 「んー、おいしい!」
 「ほんと、気分いいねえ」

 変わったことと言えば、グラスの中がジュースではなくワインになったことだ。

 「いやー、俺らも大人になったねえ」
 「うん、こうやってみんなでお酒を飲めるなんてね」

 仁と絵梨の言葉に、美桜も頷く。

 「でも、四人でいると、あの頃と何も変わらない気もするね。すごく心地いい」
 
 アレンの言葉にも皆で同意する。

 さっきはあんなに広いと感じたダイニングテーブルには、今や数々の美味しそうな料理が所狭しと並べられている。

 運んできてくれるのは、少し年配の、これまたきちんとした身なりのグレッグという男性だ。

 ウォーリング家の執事をしていると、先程またもや流暢な日本語で挨拶してくれたのだった。

 「お料理、どれもこれも本当においしいね」
 「うん。もう私、一生分の贅沢を今味わってる気がする」
 「やだ、美桜ってば」
 
 本気で言ったのに、なぜか絵梨だけでなく仁やアレンにも笑われた。

 「美桜ちゃんてさ、時々天然だよね」
 「うん。面白い事言うよね、昔から」
 「ええ?そう?私いつだって真面目に話してるのに」
 「だから、そういうところが天然なの!」

 絵梨がダメ押しのように言うと、また皆で笑い出した。

 (ま、いいか)

 つられて美桜も笑い出す。
 何を話していても楽しくなる、それがこの四人だった。
< 38 / 238 >

この作品をシェア

pagetop