桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 大学に入ってから、美桜はとあるテーマパークでアルバイトをしてきた。

 幼い頃から好きだったダンスを生かし、パーク内で開催されるショーやイベントに出演している。

 就職活動を始める際、色々考えて美桜はそのままそこに就職することを決めた。

 四年生の後半になってからは、三年以上の勤務実績を買われ、契約社員として新たに企画にも携わるようになった。
 ショーやイベントを企画し、出演もする、ダンサー兼プロデューサーといったところだ。

 春休みや夏休みの繁忙期はもちろん、バレンタインやホワイトデー、イースターやハロウイン、クリスマスなど、季節を通じて一年中なにかしらのイベントを考える。

 お正月は、年末カウントダウンから始まり、新春ショーを冬休みが明けるまで開催する。

 その期間中、出演者はチームでローテーションを組んで休むことはあっても、個人的に有給休暇を取ったりすることは出来ない。

 誰一人欠けても、ショーは成り立たたなくなるからだ。

 「そうだよね、サービス業だもんね」
 「うん、ごめんね」
 
 トーンダウンした二人とは対照的に、いつもの調子で仁が言う。

 「正月どんぴしゃだと飛行機も高いし混んでるしさ。一月八日くらいからならどう?」
 「あ、その頃から閑散期に入るから、逆に有給消化を推奨される!」
 
 ぱっと顔を上げて美桜が言うと、絵梨の表情も明るくなった。

 「ほんと?私も講義は一月の後半から行けば大丈夫」

 二人の様子を見て、仁がニッと笑った。

 「よし!じゃあ決まり!飛行機の予約は俺がやるよ。アレンにも言っとく。久しぶりに全員集合ってな!」
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