桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
「坊ちゃま、何か召し上がるのですか?」
「そう。夕べ寝てないんですって。だからせめて少しでもお腹に入れないとって、今ココアを飲んでいるところ」
そう言って美桜がソファの方に目を向けるとグレッグもそちらを振り返り、アレンの姿をまじまじと見た。
「なんと、坊ちゃまが朝食を!それでは早速準備致します」
急いで踵を返すグレッグを、美桜は少し不思議そうに見送る。
(なに?アレンが朝食を食べるのって珍しいのかしら)
おいしそうな焼きたてのパンを手に戻って来たグレッグにそう聞いてみる。
「ええ、坊ちゃまはいつも、どんなに勧めても食事をあまり召し上がらないのです。特に朝食は。食欲がないと仰って。しっかり眠れば朝も食べられるようになると思うのですが」
「ええ?徹夜するのもいつものことなの?」
美桜が驚くと、左様でございますと困ったように頷き溜息をつく。
と、それまで黙っていたアレンが急に口を開く。
「グレッグ、その坊ちゃまっていうのはやめろ。何度も言って…」
そこで言葉を止めたのは、美桜の視線に気付いたからだ。
怒っている。とても怒っている。
慌ててアレンは目を伏せてココアを口に運んだ。
「アレン、こっちに座って」
ウッとうめき声を上げてからゆっくり立ち上がって、ダイニングテーブルへ向かう。
向かい合って座ると、美桜は
「さあ、いただきましょう」
と手を合わせた。
グレッグは、さっとアレンの前にクロワッサンを載せたお皿を差し出す。
ふうと小さく溜息をついた後、ゆっくりと食べ始めたアレンを満足そうに眺めてから、グレッグが美桜に聞いてきた。
「美桜様、卵料理はいかがいたしましょう?スクランブルエッグ、オムレツ、ボイルドエッグなど、どれがよろしいですか?」
「ええ?選んでいいの?どうしよう、迷うな。んー、じゃあオムレツで!」
「かしこまりました。プレーンがよろしいですか?それともチーズ、ハム、マッシュルームなど入れましょうか?」
「ええ?中身も選べるの?そうだな、じゃあチーズで!」
「かしこまりました。では付け合せのポテトはいかがいたしましょう?マッシュドポテト、ハッシュブラウン、フレンチフライも出来ますが」
「ええ?ポテトも?そうね、朝だし、マッシュドポテトにしておこうかな」
そう答えながら、美桜はアレンに目を向ける。
さっきからどうも様子がおかしい。
下を向いて肩を震わせている。
「かしこまりました。スープはいかがでしょう?ミネストローネ、コーンスープ、オニオンスープなど」
「ええ?スープ、そうねえ、どれもおいしそうだけど、じゃあミネストローネで!」
そのとたん、もう我慢出来ないといったように、アレンが吹き出して笑い始めた。
「あはは!美桜ってば、おかしくってもう」
「何よ急に?」
ねえ?とグレッグと顔を見合わせる。
「だって、いちいち真剣に。ははは、卵とかポテト、朝からそんなに悩む?あはは」
「もう!何よ!だって豪華な朝食作ってもらえるのよ?そりゃ真剣に悩むわよ」
まったくアレンは。いつも贅沢に囲まれて有難さを分かってないわ!とぶつぶつ呟きながら、美桜は運ばれてきたオムレツやポテトを切り分けて、アレンの前にお皿を差し出す。
「はい!これも食べてね」
「ええー?パンだけでもう無理だよ」
「いいからほら、少しでも食べる!」
まるで笑われたことのお返しとばかりに、美桜は語気を強める。
しぶしぶアレンが食べ始めると、グレッグは嬉しそうに目を細めてアレンと美桜の二人を眺めていた。
「そう。夕べ寝てないんですって。だからせめて少しでもお腹に入れないとって、今ココアを飲んでいるところ」
そう言って美桜がソファの方に目を向けるとグレッグもそちらを振り返り、アレンの姿をまじまじと見た。
「なんと、坊ちゃまが朝食を!それでは早速準備致します」
急いで踵を返すグレッグを、美桜は少し不思議そうに見送る。
(なに?アレンが朝食を食べるのって珍しいのかしら)
おいしそうな焼きたてのパンを手に戻って来たグレッグにそう聞いてみる。
「ええ、坊ちゃまはいつも、どんなに勧めても食事をあまり召し上がらないのです。特に朝食は。食欲がないと仰って。しっかり眠れば朝も食べられるようになると思うのですが」
「ええ?徹夜するのもいつものことなの?」
美桜が驚くと、左様でございますと困ったように頷き溜息をつく。
と、それまで黙っていたアレンが急に口を開く。
「グレッグ、その坊ちゃまっていうのはやめろ。何度も言って…」
そこで言葉を止めたのは、美桜の視線に気付いたからだ。
怒っている。とても怒っている。
慌ててアレンは目を伏せてココアを口に運んだ。
「アレン、こっちに座って」
ウッとうめき声を上げてからゆっくり立ち上がって、ダイニングテーブルへ向かう。
向かい合って座ると、美桜は
「さあ、いただきましょう」
と手を合わせた。
グレッグは、さっとアレンの前にクロワッサンを載せたお皿を差し出す。
ふうと小さく溜息をついた後、ゆっくりと食べ始めたアレンを満足そうに眺めてから、グレッグが美桜に聞いてきた。
「美桜様、卵料理はいかがいたしましょう?スクランブルエッグ、オムレツ、ボイルドエッグなど、どれがよろしいですか?」
「ええ?選んでいいの?どうしよう、迷うな。んー、じゃあオムレツで!」
「かしこまりました。プレーンがよろしいですか?それともチーズ、ハム、マッシュルームなど入れましょうか?」
「ええ?中身も選べるの?そうだな、じゃあチーズで!」
「かしこまりました。では付け合せのポテトはいかがいたしましょう?マッシュドポテト、ハッシュブラウン、フレンチフライも出来ますが」
「ええ?ポテトも?そうね、朝だし、マッシュドポテトにしておこうかな」
そう答えながら、美桜はアレンに目を向ける。
さっきからどうも様子がおかしい。
下を向いて肩を震わせている。
「かしこまりました。スープはいかがでしょう?ミネストローネ、コーンスープ、オニオンスープなど」
「ええ?スープ、そうねえ、どれもおいしそうだけど、じゃあミネストローネで!」
そのとたん、もう我慢出来ないといったように、アレンが吹き出して笑い始めた。
「あはは!美桜ってば、おかしくってもう」
「何よ急に?」
ねえ?とグレッグと顔を見合わせる。
「だって、いちいち真剣に。ははは、卵とかポテト、朝からそんなに悩む?あはは」
「もう!何よ!だって豪華な朝食作ってもらえるのよ?そりゃ真剣に悩むわよ」
まったくアレンは。いつも贅沢に囲まれて有難さを分かってないわ!とぶつぶつ呟きながら、美桜は運ばれてきたオムレツやポテトを切り分けて、アレンの前にお皿を差し出す。
「はい!これも食べてね」
「ええー?パンだけでもう無理だよ」
「いいからほら、少しでも食べる!」
まるで笑われたことのお返しとばかりに、美桜は語気を強める。
しぶしぶアレンが食べ始めると、グレッグは嬉しそうに目を細めてアレンと美桜の二人を眺めていた。