桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
コンコンとノックの音がして、美桜はドアの方を見た。
「はーい。どうぞ」
「おはようございます。美桜様」
そう言って、メアリーがさわやかな笑顔を浮かべながらドレッシングルームに入ってきた。
「おはよう!メアリー。絵梨ちゃんはまだ寝てるの」
「ええ、そう思いましてベッドルームではなくこちらのドアをノックしましたの」
(おお!さすが。仕事が出来るわ)
ドレッサーに座って髪を乾かしていた美桜の後ろを通り、メアリーは手に持っていたたくさんの荷物をクローゼットにしまっていく。
「夕べブティックでクリーニングに出したお二人のお洋服が戻ってきましたわ。引き出しに入れておきますね。あと、衣裳も少しお持ちしました。いつでも使って下さいね」
クローゼットに次々とハンガーをかけていくメアリーにありがとうと言ってから、美桜は髪をとかし始める。
「グレッグから、美桜様はもう朝食をすませられたと聞きましたわ」
「うん、そうなの。朝食おいしかったー。さっきバスルームで湯船にも浸かってね、優雅な気分よ」
バスローブ姿でちょっとのけ反ってみせると、メアリーは、まあ、と笑う。
「でね、これからアレンのうちに一緒に行くことになったの」
その途端、メアリーの顔からすっと笑みが消えた。
「なんですって!パレスに?まあ、大変!」
(は?パレス?なに、パレスって)
声をかけようとしたが、すでにメアリーはバタバタと慌ただしく動き始めて聞くに聞けない。
「美桜様、鏡の方を向いて下さい」
「は、はい」
圧倒されておとなしく従う。
メアリーは、ドレッサーの引き出しから大きなメイク道具を取り出すと、美桜の髪を手際よく分けながらクリップで留めていく。
さらにドレッサーの上の化粧水や乳液などをじっくり美桜の顔に沁み込ませると、クリームを手早く塗り始めた。
「すごいわねえ。メアリー、ヘアメイクも出来るのね」
「これくらいは当然ですわ。それより、ご出発は何時ですの?」
「えっとね、八時半にエントランスで待ち合わせなの」
「なんですって!あと四十分しかないですわ!」
「ご、ごめんなさい」
勢いに負けて、なぜだか美桜は謝る。
メアリーはもう何も耳に届かないようで、ものすごい集中力で手を動かし続ける。
メイクが終わると、すかさず今度は髪を結い始めた。
左右二つに分けて編み込んでいく。
まず右側を編み終えると、毛先を左耳の後ろで留める。
同じように左側を編み終えると、毛先を右耳の後ろの髪に押し込みながら留めた。
(おお、なんだかちょっと清楚な感じね)
美桜が鏡の中を覗き込んでいる間に、メアリーはクローゼットからなにやら取り出していた。
「美桜様、さあ、こちらにお着替えを」
「は、はい」
「はーい。どうぞ」
「おはようございます。美桜様」
そう言って、メアリーがさわやかな笑顔を浮かべながらドレッシングルームに入ってきた。
「おはよう!メアリー。絵梨ちゃんはまだ寝てるの」
「ええ、そう思いましてベッドルームではなくこちらのドアをノックしましたの」
(おお!さすが。仕事が出来るわ)
ドレッサーに座って髪を乾かしていた美桜の後ろを通り、メアリーは手に持っていたたくさんの荷物をクローゼットにしまっていく。
「夕べブティックでクリーニングに出したお二人のお洋服が戻ってきましたわ。引き出しに入れておきますね。あと、衣裳も少しお持ちしました。いつでも使って下さいね」
クローゼットに次々とハンガーをかけていくメアリーにありがとうと言ってから、美桜は髪をとかし始める。
「グレッグから、美桜様はもう朝食をすませられたと聞きましたわ」
「うん、そうなの。朝食おいしかったー。さっきバスルームで湯船にも浸かってね、優雅な気分よ」
バスローブ姿でちょっとのけ反ってみせると、メアリーは、まあ、と笑う。
「でね、これからアレンのうちに一緒に行くことになったの」
その途端、メアリーの顔からすっと笑みが消えた。
「なんですって!パレスに?まあ、大変!」
(は?パレス?なに、パレスって)
声をかけようとしたが、すでにメアリーはバタバタと慌ただしく動き始めて聞くに聞けない。
「美桜様、鏡の方を向いて下さい」
「は、はい」
圧倒されておとなしく従う。
メアリーは、ドレッサーの引き出しから大きなメイク道具を取り出すと、美桜の髪を手際よく分けながらクリップで留めていく。
さらにドレッサーの上の化粧水や乳液などをじっくり美桜の顔に沁み込ませると、クリームを手早く塗り始めた。
「すごいわねえ。メアリー、ヘアメイクも出来るのね」
「これくらいは当然ですわ。それより、ご出発は何時ですの?」
「えっとね、八時半にエントランスで待ち合わせなの」
「なんですって!あと四十分しかないですわ!」
「ご、ごめんなさい」
勢いに負けて、なぜだか美桜は謝る。
メアリーはもう何も耳に届かないようで、ものすごい集中力で手を動かし続ける。
メイクが終わると、すかさず今度は髪を結い始めた。
左右二つに分けて編み込んでいく。
まず右側を編み終えると、毛先を左耳の後ろで留める。
同じように左側を編み終えると、毛先を右耳の後ろの髪に押し込みながら留めた。
(おお、なんだかちょっと清楚な感じね)
美桜が鏡の中を覗き込んでいる間に、メアリーはクローゼットからなにやら取り出していた。
「美桜様、さあ、こちらにお着替えを」
「は、はい」