桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「それからここで働くスタッフは、皆ウォーリング家からお給料をもらっている。つまり地元の人は職探しに困らずに済むんだ」
 「そうなんだ。地域の人に働く場も提供してるのね。アレンは優しい地主さんてところ?」
 
 絵梨の言葉に、仁はうーんと少し考える。

 「そうかもね。あ、でもちょっと違うか。あいつのおじいさんの、そのまたおじいさん、いや、違ったかな?」
 「…何言ってるの?」
 
 絵梨が冷めた目で見ていると、とにかく!と仁は語気を強めた。

 「あいつの先祖は伯爵だったんだよ。今は違うけど、地元の人達は今でもウォーリング家を讃えてる。だから今は、慕われてる大地主ってとこかな」
 
 思わぬ話の展開に、ええーっと驚きの声を上げる絵梨と美桜だったが、仁は気にする様子もなく、お、ここにしようぜ。エスニック料理食べたかったんだ。と店内にスタスタ入って行った。
 
 大皿で次々出てくる料理を、仁は手早く取リ分けてくれる。
 ナシゴレンや生春巻きなど、どれもこれもとてもおいしかった。

 美桜がパレスのことを聞かれたのは、ちょうどサラダのおかわりを仁が渡してくれた時だった。

 「どうだった?パレス。ジョージパパにも会った?」
 「やだ、仁くん。ジョージパパって」

 (でもその呼び方は合ってる気がする)
 美桜は思わずクスッと笑った。

 「あ、そうだ。さっきアレンから連絡あってさ。明日、四人で出かけないかって」
 「え、どこどこ?行きたーい!」
 
 まだ行先も聞かないうちに絵梨が答える。

 「まあ、行ってからのお楽しみかな」
 仁の言葉に、わーい!楽しみと絵梨が喜ぶ。

 「絵梨ちゃんったら、気が早いね」
 そう言いつつ、美桜もなんだかわくわくしてきた。

 (四人でお出かけかあ。うん、楽しみ!)
< 65 / 238 >

この作品をシェア

pagetop