桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
【三】一月十日
 次の日も、気持ちの良い朝だった。

 冬ゆえに朝日はそこまで明るくないが、美桜と絵梨は良い日になるに違いないと確信して、いそいそと準備をした。

 メアリーに今日は動きやすいカジュアルな服装で、と言われ、何だろうね?と言いながら、二人はいつものジーンズにした。

 待ち合わせの時間にエントランスに行くと、仁がメイソンと立ち話をしている。

 「仁くん、メイソン、おはよう」
 「おはようございます。えりさま、みおさま」
 「お!お嬢様方のお揃いだ。じゃあ行こうか」
 
 外に出ると、まず絵梨が驚きの声を上げた。

 「ひゃー、何これ?馬車に見えるんだけど!」
 「いや、実際馬車だし。ははっ」
 
 仁は軽く笑いながら、さっさと乗り込む。

 (昨日の馬車とはちょっと違うみたい)
 
 美桜はじっくり見てみた。
 まず昨日ほど高さはなく、車のようにすんなり乗れる低さだ。

 それに四人乗りなのか、中も広くなっている。

 「美桜、すごいねー。この馬車、ほんとに動くのかしら?」
 「あはは、絵梨ちゃんたら。遊園地の乗り物じゃないんだから」
 「わっ!動いた。すごーい」
 
 ゆっくり動き出した馬車の窓から、行ってきまーすと二人で見送りのメアリーに手を振る。
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