桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 馬車はフォレストガーデンの門を、昨日とは違って右へと曲がった。

 相変わらず景色はのどかな田園風景だ。
 けれど絵梨とおしゃべりしながらだと、なんでもないことが楽しくなる。

 ずいぶん経ってから美桜が呟いた。

 「あれ?そういえばアレンは?」
 「ほんとだ。どこにいるの?」
 「やれやれ、お二人さん。今頃気付いたのかい?」
 
 半ばあきれ顔で、仁が両手を広げて見せた。

 「現地集合ってやつ。あ、ほら着いたよ」
 え?と慌てて二人は窓の外を見る。
 「ここって、牧場?」
 
 広大な緑のあちこちで、羊や牛がのんびり草を食べているのが見える。

 三人を乗せた馬車はゆっくりとスピードを落として右に曲がると、丸太で作られたコテージの前で止まった。

 まずは仁が馬車を降りる。

 「よーう!トムじいさん。元気だった?」
 
 出迎えてくれたのは、白髪で目が細い、優しそうなおじいさんだった。

 「ええ。仁坊ちゃまもお元気そうで」
 
 そう言ってから、馬車を降りてきた絵梨と美桜を見る。
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