桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「あー!やっと来た。どこ行ってたのよもう」
 「ごめんごめん。せっかくのお料理が冷めちゃうね」
 
 コテージに戻った美桜とアレンは急いでテーブルにつく。

 「さ、ではでは。いただきまーす!」
 
 仁は大きな声で言うと、すぐさまパクパクと勢いよく食べ始めた。

 「うまい!はあ、やっぱりトムじいのシチューは天下一品よ」
 「ほんとにおいしい!ねえ美桜」
 「うん。野菜を浸して食べるのもいいよね。家でも真似して作ってみよう」
 「美桜、一人暮らしだもんね。毎日自炊でしょ。大変だね」
 
 と、絵梨の言葉にアレンが顔を上げた。

 「美桜、今一人暮らしなの?」
 「あ、うん。一年ほど前からね。大学より仕事に行く方が多くなったから、横浜の職場の近くにアパート借りてるの」
 
 へえ、そうなんだと言うアレンに、なぜか仁が、そうなんだよと答える。

 「美桜ちゃん一人暮らし始めたっていうから、これで家に遊びに行きやすくなったと思ったのに、一度も入れてもらえないんだぜ?」
 
 すぐさま絵梨が割って入る。

 「当たり前だっつーの!女の子の一人暮らしだよ?しかもあんたは狼だよ?誰が入れるかってのよ」
 「ええ?そうなの?美桜ちゃん、そんなこと思ってたの?」
 「あ、いや、そんなことは思ってないけど、まあそんな感じのことは思ってたかな、えへ」
 「なんだよそれー。俺ショックでもう食欲なくなっちゃったよ」
 「いや、あんたとっくに完食してるでしょう」 
 「ま、そうだけどさ」
 
 あははと皆で笑い合う。

 (良かった。アレン少しは元気になったみたい)

 美桜は隣のアレンの笑顔を見て、少しほっとした。
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