桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「横から入れるドアがあるんだ。こっち」
 
 仁に続いて、角を曲がってから店内に入る。

 今度はイギリスの銘菓や紅茶を扱う食料品店のようだった。

 「わー、おいしそう。可愛い缶のお菓子もあるね」
 「本当だ。あ、私、職場にお土産買っていかなきゃ」
 
 絵梨と美桜は、わいわい言いながらお菓子を選び始めた。

 「このショートブレッド、五箱は欲しいな。んー、自分用にも欲しいからもっとかなー」
 
 美桜が人差し指を頬に当てながら考えていると、ふいに横からアレンの声がした。

 「これ?全部で何箱いる?」
 「アレン!大丈夫なの?」
 「ん?何が?」
 「いやだって、もみくちゃにされてたから」
 「はは、もみくちゃって。うん、平気だよ。それよりこのショートブレッドをお土産にするの?」
 「うん、フォレストガーデンで食べた時とってもおいしかったから」
 
 美桜がそう言うと、アレンは分かったと短く言い、店の奥のスタッフに何か伝えた。

 「あとでフォレストガーデンの部屋に届くよ。他には?絵梨もこれでいい?」
 「うん、私もこれがいい。あと紅茶も」
 「あ、そうだね。私も紅茶買っていきたい」
 
 絵梨と美桜が選ぶのを待ってから、アレンはまたスタッフに話をする。

 その後は四人揃って店を出た。
 案の定、黄色い声に囲まれる。

 「フードコートでちょっと休憩しようか」
 「う、うん。休憩にはならなそうだけどね」
 
 周りのことなど気にしていないかのように言うアレンに対し、いつ女の子達に押されるかとびくびくしながら絵梨が答える。
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