桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「あ、他はねえ。ピンフィールとか…」
 「ピン…?」
 
 美桜は苦笑すると、ドレスのポケットから自分のスマートフォンを取り出した。

 勤務先のパークのHPに載せている動画の中から一つを選んで、メイソンに見せる。

 「これは、私が実際に出演しているショーなんだけどね。もう少し先…、これ!これがピンフィール。内側の人を軸に列が回転するの」
 
 ほう…と食い入るように小さな画面を見ているメイソンに、顔をくっつける勢いでクレアが横から覗いてくる。

 途中で止めるに止められなくなって、結局ショーの最後まで流した。

 「素晴らしいですわ!これぞまさしく観る者皆を魅了するショーですわね」
 
 パチパチと拍手しながら称賛するクレアに、美桜は照れくさそうにぺこりとお辞儀する。

 ふと顔を上げると、隊員達が動画を見ようと、我も我もと手を挙げている。

 美桜はまた苦笑いしてメイソンに言った。

 「この動画、メイソンに送るわね。送信先教えて?」
 
 メイソンの連絡先を登録してから、美桜はいくつかの動画を送った。

 「私達ショーチームが定期的に更新しているブログがあるんだけど、そこから本番のショーをいくつかと、あとは練習風景を撮影したものも載せてあるから送るわね。技やターンを色々組み合わせてショーを作るの。何かの参考になれば」
 
 そう言って美桜が微笑むと、メイソンは、ありがとうございます!と言って敬礼した。

 他の隊員達も一斉に敬礼する。
 美桜はまた照れくさそうに頭を下げた。
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