桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「ん?何が?」
 「なんだか、ちょっと様子が変な気がする」
 「え?そんなことないよ」
 「そう?ならいいんだけど」
 
 美桜がそう言った次の瞬間、アレンはふっと目を閉じたかと思うと、そのまま体の力が抜けたように、一気に床に崩れ落ちた。

 「アレン!」
 
 とっさに手を伸ばして抱きとめたまでは良かったが、アレンの体重を一人で支えきれるはずもなく、美桜はアレンを抱えたまま床に座り込んだ。

 「美桜様!」
 悲鳴のようなクレアの声が響く。

 「アレン、アレン?聞こえる?」

 美桜は片腕でアレンの頭を支えながら、額に手を当ててみた。
 驚くほど熱い。

 「クレア、すぐに氷水とタオルを!あとお医者様にも連絡して」
 
 そう言いながら振り向くと、クレアは両手を口元に当てたまま呆然と立ち尽くしている。

 「クレア、しっかり!」

 美桜の声にハッと正気を取り戻すと、はい、ただいま!と言って、クレアは急いで部屋を出て行った。
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