桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 「美桜様、何事ですか?…坊ちゃま!」
 
 物音を聞いたのか、グレッグが部屋に駆け込んできた。
 メイソンも続いて入ってくる。

 「すごい熱なの。ベッドに寝かせないと」
 「はい、直ちに。メイソン、隣の部屋へ」
 
 メイソンは美桜の横にひざまづくと、アレンを一気に抱き上げた。

 グレッグが隣の部屋に続くドアを開け、メイソンはアレンを窓際のベッドへと寝かせた。

 美桜はすぐさま、アレンの様子をうかがう。
 さっきとは違い、息遣いも荒くぐったりしている。

 美桜は、アレンのシャツのボタンをいくつか外して首元を緩めながら、グレッグに言う。

 「カーテンを閉めてくれる?」
 「はい」
 
 遮光カーテンなのだろう、閉めると部屋が一気に暗くなった。

 グレッグはサイドテーブルのランプを弱めにつけてくれる。

 「ありがとう」
 
 美桜はもう一度、アレンの額と首筋に手を当てる。
 だんだんと汗もかき始めているようだった。

 「だいぶ熱が高いわ。いつからかしら」
 「さあ…。書斎で仕事中も、全くいつもとお変わりありませんでした」

その時クレアがワゴンを押して戻ってきた。

 「美桜様、お待たせいたしました」
 
 氷や水やタオルなど、どれも多めに載せている。

 「ありがとう、クレア」
 
 氷水に浸したタオルを固く絞って、そっとアレンの額に乗せる。

 一瞬、体を固くしたアレンは、そのあとホッとしたように力を抜く。

 美桜はもう一枚タオルを冷やすと、アレンの頭を少し持ち上げて、首の後ろに当てた。
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