桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
「アレン、一体どうしたのだ?」
ジョージの声がしてドアを見ると、ドクターらしき人と一緒に足早に入ってくる。
美桜はベッドから離れて壁際に移動した。
心配そうに見守るジョージの横で、鞄から聴診器や体温計などを取り出しながら、ドクターが診察する。
やがて頷いて立ち上がると、ジョージに手短に説明し始めた。
美桜の横でクレアが通訳してくれる。
「疲れが溜まっているのと、寝不足による過労でしょう、と。しっかり眠れば明日には少し良くなるそうですわ」
「そう」
美桜は短く答えた。
何かの病気ではない事は良かったけれど、やはりこんなにもぐったりしているアレンのことが心配だ。
ジョージがドクターを見送りながら部屋から出ていくと、美桜はまたアレンのそばに戻った。
額に載せたタオルは、すでにぬるく温まっている。
もう一度氷水に浸してから、載せ直した。
アレンは、肩で苦しそうに息をしながら、たくさん汗をかいている。
新しいタオルを氷水で冷やしてから、美桜はアレンの顔や首周りの汗を拭き始めた。
「美桜様、私が…」
「ううん、やらせて」
クレアが代わろうとするが、美桜は譲らなかった。
その様子を見て、グレッグがそっと椅子を持って来てくれる。
「ありがとう」
グレッグは頷いて、クレアと何やら話したあと、メイソンと一緒に部屋を出て行った。
美桜は改めて部屋を見渡す。
ダブルサイズのベッドが二つ、あとは壁際にソファとテーブルがある、ホテルのようなシンプルな部屋だった。
「ここは誰かの寝室なの?」
美桜の質問にクレアが答えてくれる。
「寝室というよりは、休憩するためのお部屋ですわ。少し横になったり、シャワーを浴びたり。ですから、いつも使っている訳ではないんです」
「そう」
「それより美桜様はそろそろフォレストガーデンへお戻りください。グレッグがメイソンに送らせると言っていました。せっかく夕食にお招きしましたのに、申し訳ありません」
でも…、と美桜がアレンに目を向けると、坊ちゃまの看病はお任せくださいとクレアが言う。
美桜はしばらく考えてから首を振った。
「やっぱりこのままここにいさせて。辛そうなアレンを置いて帰るなんて出来ないわ」
「そう仰られても…。お客様にそんな」
「私、お客様じゃないわ。アレンの友人よ。私にとってもアレンは、とても大事な友人なの。お願い!クレア」
顔の前で両手を合わせた美桜が、目をつぶって必死に頼むと、やがてクレアは諦めたように息を吐いた。
「分かりましたわ。ですが、決して無理はなさらないでくださいね。美桜様のサポートは私がやります。だって美桜様は大事なお客様なのですからね」
「あら、クレアったら結構強情なのね」
「まあ!美桜様こそ」
そう言うと二人は顔を見合わせて笑った。
ジョージの声がしてドアを見ると、ドクターらしき人と一緒に足早に入ってくる。
美桜はベッドから離れて壁際に移動した。
心配そうに見守るジョージの横で、鞄から聴診器や体温計などを取り出しながら、ドクターが診察する。
やがて頷いて立ち上がると、ジョージに手短に説明し始めた。
美桜の横でクレアが通訳してくれる。
「疲れが溜まっているのと、寝不足による過労でしょう、と。しっかり眠れば明日には少し良くなるそうですわ」
「そう」
美桜は短く答えた。
何かの病気ではない事は良かったけれど、やはりこんなにもぐったりしているアレンのことが心配だ。
ジョージがドクターを見送りながら部屋から出ていくと、美桜はまたアレンのそばに戻った。
額に載せたタオルは、すでにぬるく温まっている。
もう一度氷水に浸してから、載せ直した。
アレンは、肩で苦しそうに息をしながら、たくさん汗をかいている。
新しいタオルを氷水で冷やしてから、美桜はアレンの顔や首周りの汗を拭き始めた。
「美桜様、私が…」
「ううん、やらせて」
クレアが代わろうとするが、美桜は譲らなかった。
その様子を見て、グレッグがそっと椅子を持って来てくれる。
「ありがとう」
グレッグは頷いて、クレアと何やら話したあと、メイソンと一緒に部屋を出て行った。
美桜は改めて部屋を見渡す。
ダブルサイズのベッドが二つ、あとは壁際にソファとテーブルがある、ホテルのようなシンプルな部屋だった。
「ここは誰かの寝室なの?」
美桜の質問にクレアが答えてくれる。
「寝室というよりは、休憩するためのお部屋ですわ。少し横になったり、シャワーを浴びたり。ですから、いつも使っている訳ではないんです」
「そう」
「それより美桜様はそろそろフォレストガーデンへお戻りください。グレッグがメイソンに送らせると言っていました。せっかく夕食にお招きしましたのに、申し訳ありません」
でも…、と美桜がアレンに目を向けると、坊ちゃまの看病はお任せくださいとクレアが言う。
美桜はしばらく考えてから首を振った。
「やっぱりこのままここにいさせて。辛そうなアレンを置いて帰るなんて出来ないわ」
「そう仰られても…。お客様にそんな」
「私、お客様じゃないわ。アレンの友人よ。私にとってもアレンは、とても大事な友人なの。お願い!クレア」
顔の前で両手を合わせた美桜が、目をつぶって必死に頼むと、やがてクレアは諦めたように息を吐いた。
「分かりましたわ。ですが、決して無理はなさらないでくださいね。美桜様のサポートは私がやります。だって美桜様は大事なお客様なのですからね」
「あら、クレアったら結構強情なのね」
「まあ!美桜様こそ」
そう言うと二人は顔を見合わせて笑った。