桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 やがて夜が更けるにつれて、部屋が一気に寒くなってきた。

 クレアは美桜のために暖房を強めてくれたが、アレンのことを思って少し控えめにしてもらう。

 アレンはもはや汗びっしょりという具合だった。

 「クレア、アレンの着替えを持って来てくれる?汗を良く吸う素材で、そうねえ、ナイトガウンみたいなのがあれば」
 「ええ、ありますわ」
 
 クレアは部屋のチェストから、肌触りの良いガウンを出して美桜に渡す。

 「ありがとう。クレアも手伝ってくれる?」
 「ええ?まさか美桜様、坊ちゃまを着替えさせるのですか?」
 「もちろん。だってこんなに汗をかいた服のままだと良くないでしょ?」
 「それでしたら、メイソンかグレッグに…」
 「わざわざ呼ばなくても大丈夫よ」
 
 そう言って美桜は掛け布団をめくると、手早くアレンのシャツのボタンを外していく。

 全部外すと、急に空気に触れてびっくりさせないようにバスタオルをアレンの体に載せてから、シャツの前を開いた。

 「腕を抜くのが大変なのよね。クレア、アレンの体をゆっくり横に傾けるわよ」
 「は、はい!」
 
 さっさと作業を進める美桜に、もはやクレアは従うしかなかった。

 せーの!と声を合わせて、まずはアレンを右向きにさせる。
 そうして左腕をゆっくりシャツから抜いた。

 「ふう、なんとか片腕抜けたわね」
 そう言って美桜は、左腕が抜けたシャツを、アレンの体の下へとぐいぐい押し込む。

 「じゃあ今度は左側に傾けるわよ」
 
 一旦仰向けにしてから、せーの!と再び声をかけ合い、アレンの体を左側に向かせた。
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