桜のティアラ〜はじまりの六日間〜
 クレアが、汗で冷たくなったアレンのシャツを持って部屋を出て行くと、美桜はベッドの横の椅子に座ってふうと一息ついた。

 アレンは、どうやら幾分落ち着いてきたようだ。
 穏やかな寝息を立てて、熟睡している。
 
 アレンの額にそっと手を載せてみると、さきほどよりは熱も下がっている気がする。

 (うん、このまま朝まで眠れば平熱になりそうね)
 
 ほっと安心した途端に、手のひらに触れているアレンを意識してドキッとする。

 (なんだろう。なんだか急に、アレンが知らない人になったみたい)

 「美桜様、お茶をお持ちしましたわ。少し休憩を…」
 
 戻ってきたクレアが美桜の様子を見て言葉を止める。

 「美桜様、どうかされました?お顔が赤いような。もしかして、美桜様も風邪を?」
 「ああ、ううん。これは違うの。ほら、ちょっとアレンの着替えで動いたから」
 「そうですか?でも心配ですわ。こちらのベッドで休んでくださいな」
 「うん、あとでね。それよりクレアも、お部屋に戻って少し眠ったら?」
 「私は大丈夫です。こう見えても体力には自信があるんですの」

 そう言って、ソファテーブルに紅茶を用意する。
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