最強王子とフェンス越しの溺愛キス
生吹くんは総長なの?
と思い切って聞いてみた。
真剣な質問に、真剣な顔で生吹くんは答えてくれた。
「新島から聞いたの?」
「うん……皆もそう思ってるって」
何をもって「皆」というかは知らないけど。でも、暴走族の間では有名な噂って事なのかな?
すると生吹くんは「俺はね」と、月明かりに照らされた漆黒の瞳を、ゆっくりと私に向ける。
「俺は――総長じゃないよ。
暴走族にも入ってない」
「……え?」
「だから、お昼に言ったでしょ俺。
噂なんて嫌いだって」
「あ……」
『本当、噂なんて散々だよ。いつも本人にとっていい事はない』
確かに、生吹くんは噂の事を毛嫌いしていた。
あれは「王子様」って呼ばれる噂に辟易していただけじゃなくて、「総長」って噂される事も嫌いって、そう言ってたんだ。
「生吹くん、自分が総長って噂されてるって……知ってたの?」
「色んな人が色んな場所で噂してくれるからね。すぐ俺の耳にも届いたよ」
「そう、なんだ……」
眉を下げて笑う生吹くん。その顔は、私が「魔女」と噂された時に浮かべた顔と一緒だった。